送電網の「面白い場所」を、地図の一部とともに紹介するページです。
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日高市の住宅地の縁にある中東京変電所。一見ふつうの変電所ですが、 送電線を電圧色でたどると、性格のまったく違う3つの系統がここで出会っていることが分かります。
源流は約200km先、新潟県の信濃川に鉄道省が建設した信濃川発電所です。 国鉄を経て JR東日本が継承し、いまも JR の消費電力の約4分の1をまかなうこの自営水力は、 実は発電所ごとに東京への送り方が違います。
古参の千手発電所(昭和6年着工・昭和14年運転開始)と小千谷発電所(昭和26年)の電力は、 JR 自前の 154kV 送電線で三国山脈の清水峠を越え、深谷市の岡部交流変電所を経て 三鷹の武蔵境交流変電所へ。この一帯を貫く茶色の「岡部境線」がその幹線です。
一方、最も新しい小千谷第二発電所(平成2年・275kV)の電力は自営線では運ばず、 東京電力の 275kV 系統に預けて(託送)、ここ中東京変電所まで送ってもらいます。 そして 154kV に降圧し、短い分岐「中東京信濃川線」で岡部境線に合流させて武蔵境へ — つまりこの分岐は、予備ではなく託送した電力をふだんから受け取っている窓口(電力振替の受け渡し点)で、 この変電所は鉄道電力と一般電力網の接点になっています。
すぐ北を横切る紫の西上武幹線は、群馬・埼玉西部を貫く 500kV の基幹送電線。 東隣の鶴ヶ島には 500kV の新所沢変電所が構え、赤い中沢線3・4号線(275kV)が 両者の間を結びます。戦後に築かれた首都圏西部の電力大動脈です。
南西へ目を移すと、黄色い 66kV の「太平洋セメント線」が、太平洋セメント埼玉工場の 構内にある太平洋セメント変電所へ一直線に延びています。セメント製造は電力多消費型産業の代表格。 特定の工場に電気を届けるためだけに引かれた専用の送電線が、地図にそのまま姿を現しています。
戦前の鉄道自営電力、戦後の 500kV 基幹系統、産業への専用供給 — 時代も役割も違う3つの送電網が、数kmの範囲に同居しているのがこの場所の面白さです。 地図を傾けて俯瞰すると、変電所を結節点に電圧色の線が集まってくる様子がよく分かります。